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意識を取り戻して、目にしたのは薄暗い闇とゴツゴツした石の天井だった。
寝台も石造りで硬く冷たい。
……もしかして刑務所? わたしは捕まったの?
横を見ると鉄格子の扉。
やはり刑務所だ。
……しくじったのか。わたしとしたことが
だが、今いる場所は普通の刑務所とは違っているようだった。
窓からは波の音が聞こえ、潮の匂いがする。
建物は大小さまざまな石を積みあげた無骨な造り。
以前、下見で行ったパリのラ・サンテ刑務所とは洗練度が全然違う。
それと……。
「ちょっと、何してんのよ!?」
レティシアは跳ね起きて足もとにいた男に蹴りを入れた。
頭部にキックをまともに食らい、男は壁に吹っ飛ばされる。
「わ、わたしのスカートめくってどういうつもり!?」
「可愛い女の子が眠っていればスカートをめくる。男として当然の行為だと思うが」
「はあ?」
「いやあ、レディ・ルパンのパンツを拝めるとは最高の幸せ」
「あたしがルパンだって知ってるの?」
「俺も悪党の端くれなんでね。遠くから姿くらいはお見かけしてる」
男は自己紹介を始めた。
「俺はディーノ・ベルモンド。しがない詐欺師だ。大怪盗アルセーヌ・ルパンのご令嬢に失礼な行為に及び、深く反省しております」
「反省なんかしてないくせに。それにアルセーヌ・ルパンの娘というのはやめて。わたしはわたしなんだから」
ディーノはチャラくてナンパな典型的なイタリア男だった。
詐欺師をやっているらしいが、いかにも舌先三寸で生きている感じだ。
「しかし、レディ・ルパンも捕まってしまったとはな」
ディーノが小さくため息をついた。
「どういうこと?」
レティシアとしては自分が置かれている状況について詳しく知りたい。
「それは……。俺が話すより実際に見てもらった方がいいかもしれねえな」
ディーノは鉄格子の扉を開けた。
「何だ、その扉、開くんだ?」
「一応、この監獄島の中は自由に歩いていいことになっているらしい」
「監獄島?」
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