第1話 監獄島の殺人鬼たち

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 中を歩きまわって状況が少しずつわかってきた。  ひとつは、ここが〝監獄島〟と呼ばれる絶海孤島の監獄であること。  建物は中世の城を移設したもので3階建て。  形は円形で、中央の看守詰め所(今は看守はいないが)を取り囲むように鉄格子の石牢が並んでいる。  周囲は荒波が打ちつける海で、船がなければ絶対に逃げられない。  そして、ふたつめ──  世界中の著名な悪党が収容されていること。  2階の石牢には、横縞の囚人服を着た身長3メートルを超える巨人がいた。  レティシアを見ると、丸太のような腕を見せて、 「ぐるるるっ、レディ・ルパン、キル・ユー! キル・ユー!」 「……ザ・コンビクト。どうしてあなたがここにいるの?」  レティシアが〝ザ・コンビクト〟と呼んだ巨人は何百人という人間を殴り殺してきた凶暴な死刑囚だ。  今も暴れ出さないように、重りのついた鎖を両足首につけている。  おまけに無類のタフで、これまでに何度も絞首台にのぼったが、絞首ロープが通用せず、死刑を免れてきた。  カリフォルニアの刑務所に収容されていると聞いていたが、どうしてここにいるのだろう?  円塔の階段では、アメリカの殺し屋スタン・ルッカとすれ違った。  全身からアルコール臭を漂わせて彼は言う。 「レティシアじゃないか……。酒、持ってないか? 酒くれよ……!」 「スタン、相変わらずね。昔、世話になったから言うけど、もうお酒はやめなさい」  ルッカは超一流のガンマンだが、極度のアルコール中毒で、酒を飲んでいない時は手が震えて銃を持てない。  レティシアとはいっしょにアメリカのマフィアと戦った仲だ。
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