おとぎ話

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昔、山脈の向こうに悪魔の国があって、恐ろしい魔王が潜んでいると言われていた。 ある時、隣の国の王様が魔王を倒そうと思い立ち、大臣達を呼び集めて「あの恐ろしい魔王を倒すにはどうしたら良いか」と尋ねた。すると大臣達は答えて「あの悪魔共に勝る数の兵を集めねばなりません。奴等の魔法に耐えうる数の兵を」と言った。そこで王様は国中の町や村にお触れを出し、兵を募った。そうして集まった人々に剣と鎧を与え、悪魔の国へ送り出したが、彼等は悪魔達の魔法に耐えられず、多くが死んでしまった。また、生き残った者達は這々の体で逃げ帰ってきた。彼等は魔王を酷く恐れて「あの魔王の何と恐ろしいこと。髪は羊毛、目は炎のようだった。また、天の太陽をも従えていた」と口を揃えて言った。 困った王様は大臣達を集めて「あの恐ろしい魔王を倒すにはどうしたら良いか」と尋ねた。すると大臣達は答えて「宝物庫から魔法の剣を出して騎士達に与えましょう。悪魔達の魔法を退けられるだけの数を」と言った。すると王様は召使い達に命じて魔法の剣を宝物庫から取り出させ、これらを騎士達に与えた。そうして、騎士達を悪魔の国に送り出した。悪魔達は彼等を追い出そうと戦ったが、騎士達の魔法の剣に多くが斬り殺され、残った者達は這々の体で逃げていった。勝利を収めた騎士達は喜び勇んで帰ってきた。彼等は「あの悪魔共の何と弱々しいこと。剣は紙のように脆弱、魔法は目眩ましのよう。魔王も同じであろう」と口を揃えて言った。王様も彼等と一緒になって喜び、盛大な祝宴を催した。そして国中から高貴な人々が招かれ夜通し彼等は喜び合った。 しかし、その夜に魔王は生き残った悪魔達と共に盗人のようにやって来た。
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