おとぎ話

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魔王は右の手に赤い火種、左の手に赤い剣を持ち、燃える七羽の鳥を従え、目は溶岩のように赤く、髪は蛇の腹のように白く、同じ色の服を纏い、足は真鍮の甲冑をはめ、声は雷鳴の響きに似て、六対の翼は炎の剣のようだった。人々は魔王の恐ろしい姿に震え上がったが、魔王が通った道には火と硫黄、人の背丈ほどもある雹、鉄の流星が降り注いだので、彼等は死んでしまった。王様はこれを知ると驚いて、騎士達を集めさせると「魔王がやって来た。行って悪魔共を打ち倒せ」と命じて、彼等を送り出した。そして彼等は城のすぐ近くまで迫っていた悪魔達と戦い、これによって多くの人と悪魔とが死んだ。最後は幾つもの深い傷を負った魔王だけが残り、騎士達を皆殺しにした。魔王は烈火のように怒り「何を呑気に浮かれているのか。杯に並々我等の血を注いだお前達は、今宵我等の怒りをその倍も杯に注がれるのだ」と言って、祝宴が開かれている王城に向かい、そこに火の雨を降らせ、たちまち火の海のようにしてしまった。後には、何時までも黒い煙が天まで立ち上り続けた。
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