東の山の竜鳥

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昔、東の岩山に鋭い鉤爪と牙、大きなひん曲がった嘴のある、竜ほど大きな鳥が住んでいて、度々山の麓に降りてきては家畜を連れ去って食べたり、人を殺したりしていた。人々はこれを竜鳥と呼んで恐れていた。ある時、人々が嘆いているのを見て、王様は「竜鳥を倒した者に莫大な宝と騎士の称号を与える」と言ってお触れを出した。 ある村に貧しい兄弟がいて、彼等は竜鳥の話を聞くと都に上がった。そうして二人は王様から命じられて竜鳥を退治するために東の岩山に向かった。都から出る前に王様は「どこから入っても構わないが山の正面からは入るな。そうすれば登る前から竜鳥に見付かってしまうだろう」と言っていたから、狡猾で抜け目ない兄は険しい東側から、真面目で素直な弟はなだらかな南側から山を登った。 弟がなだらかな道を歩いていると、前から悪魔がやって来て「あなたはどこへ行くのです?」と言った。弟が「これから竜鳥を退治しに行くのです」と正直に答えると、悪魔は「正直で純真なあなたにこの魔剣を差し上げます。これはあなたが望めば炎で竜鳥を殺すだろう。ただしあなたは次のことを守らねばならない。あなたは竜鳥を殺した後、この魔剣を川に捨てなければなりません。そして私と会ったことと魔剣をもらったことを誰にも言ってはなりません」と言って、魔法の剣を弟に与えた。弟は「ありがとう。約束を守るよ」と言って悪魔と別れた。そうして山頂にたどり着くと彼は竜鳥が大きな翼で羽ばたいているのを見た。竜鳥は噂の通り恐ろしい姿をしていて、体は青かった。 竜鳥は弟を見付けると真っ直ぐに降りてきて捕まえようとした。しかし魔法の剣を持った弟が念じると、剣は赤い炎を噴いて竜鳥を焼き殺した。そうして竜鳥の死体を王様に見せるために引っ張って行った。この様子を兄は岩の上から見ていて、この弟に先を越されたことを知って妬ましく思い、あわよくば手柄を横取りしようと企んだ。 兄は弟が麓に着く前に合流して、どうやって竜鳥を殺したのかを尋ねた。弟は始めは何も言わなかったが、兄が強く訊いてくるのでとうとう悪魔から魔法の剣を授かったことを言ってしまった。
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