2人が本棚に入れています
本棚に追加
そうしてその夜、弟が眠ったのを見計らって兄は魔法の剣で彼を殺して土の中に埋めた。剣も森の中に隠して一人で竜鳥の死体を引きずって都に向かった。
王様は民衆の中に竜鳥を倒せる者はいないと思っていたので、兄が竜鳥の死体を引きずって戻ってきたのを見ると大変驚いて「あれは何と勇敢な男だろう。身分は卑しいが騎士の称号を受けるに相応しい」と言った。そうして兄は莫大な宝と騎士の称号を与えられ、都に大きな屋敷を建ててそこに住み、騎士として剣を握る日々を送った。他の騎士達には下手な田舎者と蔑まれたが、実戦では隠していた魔法の剣を使い大きな戦功を立てて瞬く間に出世した。
しかしある時、隠していた魔法の剣が騎士長に見付かってしまった。そうして騎士長は「何故お前がこれを持っているのか答えなさい。これは上位の騎士だけが持てるものである」と兄を問い詰めた。実はこの魔法の剣は王国の騎士団のもので、王様から許された者だけが持つことを許されていた。悪魔は騎士を殺し、奪って持っていたものを弟に寄越したのだった。言い逃れできないと思った兄は自分のしたことを正直に話した。王様はこのことを耳にすると烈火のように怒って「この男は元来私のものであるはずの魔法の剣を悪魔からもらい、それで竜鳥を殺したと言っている。このような者は川に捨ててしまえ」と騎士長に命じた。こうしてこの兄は袋に詰められ川に沈められて殺された。
最初のコメントを投稿しよう!