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「ここでデートとは、なんて言うか、斬新だな」
俺は佐久嶋さんと隣り合って、カウンター席に座っている。
ここは俺が行きつけの定食屋だ。早い、安い、白飯おかわり自由とあって、店内は大学生や仕事帰りのサラリーマンで賑わっていた。
夜の日替わり定食を二人分注文して、俺はセルフサービスの冷水を取りに行った。 グラス二つを手に持って振り返ると、佐久嶋さんは組んだ両手に顎を乗せて、カウンターの向こうで忙しなく動き回るおかみさんを見つめていた。
すっと通った鼻筋や、顎から首へと繋がる細いライン。きつく結ばれた薄いくちびる。
明らかに周囲の人間とは放つオーラが異なっていて、おかみさんもそわそわしているし、周囲の客たちもそれとなく佐久嶋さんをうかがっているのが見てとれた。
席に戻ると同時に、おかみさんがトレーを運んできた。
「イケメンくんを連れて来てくれたから、今日は大盛りよ!」
「ありがとうございます!」
「イケメンくんも、もちろん大盛りだからね」と、佐久嶋さんを見つめるおかみさんの瞳が、乙女のようにきらきらと輝いている。
「うまそうだな」
「うまいっすよ。いっただきまーす」
手を合わせてから、早速俺は主菜へと箸を伸ばした。
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