3 藤野

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   駅に戻ろうとする佐久嶋さんの腕を取り、こっちです、と引っ張った。 「次は、どこだ?」 「佐久嶋さんち」  拳が飛んできたので慌ててよけながら「嘘! 嘘ですってば!」と叫んだ。 「帰りますよ。佐久嶋さん、明日仕事ですもん」 「やけに早いな」 「その代わり、家まで歩きますよ。いっしょに飯食って、喋りながらだらだら歩いて帰る。こういう感じが憧れだったんすよ」 「……ふうん」 「質問、していいですか?」 「何だよ」 「佐久嶋さん、何歳です?」 「もうすぐ二十五」 「元妻と子どもがいるって、あれ本当?」 「んなわけねーだろ」 「恋人は?」 「いない」 「え?」 「なにが『え?』だよ」 「いや、なんか希望の光が見えた気がした。……ちなみに好きなひとは?」 「……」 「いる?」 「ノーコメント」 「じゃ、俺のなかでは『いない』ってことで」 「……」 「またデートしてくれます?」
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