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駅に戻ろうとする佐久嶋さんの腕を取り、こっちです、と引っ張った。
「次は、どこだ?」
「佐久嶋さんち」
拳が飛んできたので慌ててよけながら「嘘! 嘘ですってば!」と叫んだ。
「帰りますよ。佐久嶋さん、明日仕事ですもん」
「やけに早いな」
「その代わり、家まで歩きますよ。いっしょに飯食って、喋りながらだらだら歩いて帰る。こういう感じが憧れだったんすよ」
「……ふうん」
「質問、していいですか?」
「何だよ」
「佐久嶋さん、何歳です?」
「もうすぐ二十五」
「元妻と子どもがいるって、あれ本当?」
「んなわけねーだろ」
「恋人は?」
「いない」
「え?」
「なにが『え?』だよ」
「いや、なんか希望の光が見えた気がした。……ちなみに好きなひとは?」
「……」
「いる?」
「ノーコメント」
「じゃ、俺のなかでは『いない』ってことで」
「……」
「またデートしてくれます?」
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