4 佐久嶋

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 それから一時間も経たないうちに、小さなちゃぶ台の上にずらりと皿が並んだ。  こんな光景も久しぶりで、俺は自分の部屋なのに落ち着かなくて、無意味に指を組んでは離すを繰り返していた。 「あったかいうちに、早く」  藤野に促されて、俺は箸を持つ。目の前に並ぶ料理から、食欲をそそる匂いが漂ってくる。 「いただきます」  軽く手を合わせて、俺はつやつやと輝くチンジャオロースーに箸を伸ばした。 「……口に合います?」  心配そうに藤野が俺の顔をじっと見つめる。 「……うまい」 「やった!」  俺の言葉に藤野の表情がぱっと明るくなる。  ああ、この顔。絶対に知ってる。さっきから心がざわついて止まらない。それなのに思い出せなくて、悔しい。 「たくさん食べて下さいね!」  テーブルの上にはほかにご飯と、卵とわかめのスープ、春雨とささみのサラダ、春巻きが並べてある。無言のまま、次の皿へと箸を伸ばす。 「サラダ、どうです?」 「うまい」 「スープは?」 「うまい」 「春巻きは?」 「……これ、俺好きだ」 「それじゃ、次回も作ります!」  ガッツポーズで叫ぶ藤野は、踊り出しそうなくらい嬉しそうだった。そんな藤野を見つめていたら、「なんですか?」とこれまたきらきらとした笑顔で見つめ返されて、俺は慌てて目を逸らした。
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