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一方フレッドは、ブランシュの身に起こったことを報告する為に女王様の元へ戻ってきていました。
女王様はなんとか起き上がれるようになるまで回復していましたが、フレッドの話を聞いて真っ青になってしまいました。
「そんな、ブランシュが」
「はい。彼女は僕の目の前で毒林檎を食べて、そのまま」
フレッドは悔しさのあまり目を伏せてしまいます。
女王様はあまりの衝撃の為か、よろよろと数歩後退ってそのまま壁にもたれてしまいました。
「私が、私がこの結果を招いた」
今にも気を失ってしまうのではないかと心配になるほど、女王様は酷い顔色です。
「あの子がまだ子供の頃、私は鏡にヴィクターのことを尋ねたの。鏡は、ブランシュの屍を映した。だから私はあの子達を引き離したのに」
その結果ブランシュが命を落とすだなんて、誰も想像していなかったことです。
フレッドはどうにか女王様を慰めようと言葉を絞り出しました。
「女王様、どうかお気を確かに」
ですが女王様はその声には答えませんでした。その代わり、ほとんど放心したような様子で彼女はぽつりぽつりと呟いたのです。
「娘を身籠った時、願ったの。雪のように白い肌をした子供が欲しいと」
「?」
「ブランシュは、私の望んだ通りの美しい娘として生まれてきた。見た目だけではなく、心も、真っ白な雪のように純真だった」
どこか遠くを見るような瞳で女王様は語り続けます。フレッドは困惑しながらも様子を見守りました。
「あんな性格に育ってしまったから、育て方を間違えたのか、本人が育ち方を間違えたのか、どちらなのかと本気で考えたわ。でもね、どちらでも良かったの。あの子が元気でいてくれたら、それだけで良かったのに」
とうとう、女王様の瞳から涙が零れ落ちました。
「以前ヴィクターが言った通り、私は娘の為ではなく私自身の為に行動していた。もう、今更なにを言ってもどうにもならないのだけれど」
女王様の声から、深い悲しみと後悔が嫌と言う程伝わってきます。
フレッドは酷く胸が苦しくなって、それ以上なにも言うことが出来ませんでした。
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