第2章 色付く日常

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この日は始業式だったので、 学校は昼過ぎに終わった。 細野先生に呼び出された時はヒヤッとしたが、 父から貰ったお守りのことを二三聞かれただけで、 注意を受けることはなかった。 カラオケや映画に行く話で盛り上がる 友人たちを横目に、私は足早で生徒玄関へ 向かった。 下駄箱から自分の靴を取りだし、履こうとした時、 「おい」 後ろから聞きなれない声がした。 「先生から聞いたんだけどさ、お前の 家、蘭島のほうなんだろ? 俺もそっちなんだ。」 彼、三島一翔の第一印象は、無口。 始業式の後、クラスで彼の自己紹介と 質問タイムがあったが、彼は質問に名詞を返すだけだった。 「星座は?」と聞かれれば、 「射手座」 「血液型は?」と聞かれれば、 「A」 自己紹介もたった一言 「よろしく」だけ。 席は偶然私の隣になったけど、 そんな様子もあって私は彼に何も 話しかけなかった。無論、 彼の方から話しかけてくることもなかった。 だから私は今初めて彼がまともに しゃべっているのを聞いたことになる。 「あ、ごめんね、私バイトあるんだ。」 「何時まで?」 「8時だけど・・」 「わかった。」 彼はそれだけ言い残すと、そそくさと 靴を履いていなくなってしまった。 私は"変わった人だなぁ"と心の中で呟き、 バイト先のコンビニへ歩み出した。
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