第2章 色付く日常

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私がバイトを始めたのは、今から2ヶ月前。 ちょうどその頃、私の母が倒れた。 父を亡くしてからあまり体調がよくなかった 母だったが、2ヶ月前の夜、突然意識を 失い、救急車で病院に担ぎこまれた。 幸い、大事には至らなかったものの、 過労やストレスによるうつ病の疑いがあると 診断され、入退院を繰り返すようになった。 母が倒れたのは私のせいだ。 父が亡くなって一番辛かったのは母だ。 本当は私が母を助けてあげなければならなかった。 なのに、私は母の優しさに甘え、 毎日バスケに熱中していた。 母は病院で看護師として働くだけでなく、 夜はこっそり副業までして、部活の用品代や 遠征代を稼いでくれていた。 私が母に負担をかけすぎたのだ。 その後、私は大好きなバスケを辞めた。 そして生活費のために駅前のコンビニで バイトを始めた。 冬季大会の直前にエースの私がいきなり辞めたため、チームは私の抜けた穴を埋められず、 大会は散々だったと聞いた。 チームメイトには本当のことを 伝えていない。 余計な心配をさせたくなかったし、 同情されて、もっと惨めになるのも嫌だった。 たまに海北のバスケ部を駅で見かける。 そんな時私は他人のふりをしてその横を 通り過ぎる。 彼女たちも私に気づいているだろう。 でも、お互い声をかけることはない。 部活帰り、楽しそうに笑う彼女たちを 見て、私は羨ましさと申し訳なさで 胸が一杯になるのだった。
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