第2章 色付く日常

4/7
前へ
/80ページ
次へ
午後8時半。辺りはもうすっかり 日が暮れて、街灯が煌々と灯っている。 ようやくバイトが終わり、私は帰路についた。 「ポラリス見っけ」 バイト後に夜空を見上げて北極星を 見つけるのが私の日課。 北極星、別名ポラリスは、こぐま座の 二等星で、常に北側にあることから、 大航海時代には船を正しい方位に 導く星として重要な役割を果たしてきた。 一等星の他の星たちの輝きには負けるものの、 迷える人間を導いてくれるような気がして 私は大好きだ。 徒歩2分ほどで駅に着く。 小さな売店と券売機以外何もない 田舎の駅。 駅長室の駅長さんは今日も暇そうにあくび している。 「おい」 後ろから飛んできた、一度聞いたことのある声。 私はすぐ後ろを振り返る。 「え?三島君?帰ってなかったの?」 「暇だから。」 彼はぶっきらぼうにそう答えた。 「そう、なんだ。」 「電車出るぞ。」 彼は私に背中を向けてホームへ歩き出す。 夜の暗闇に溶け込むその後ろ姿がとても頼もしく見えた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加