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「ずっと前から好きでした!
よかったら受け取ってください!」
新川一(あらかわ はじめ)は目の前で起きている現実離れした光景に呆然としていた。
放課後、クラスで一番可愛いと思っていた谷崎美緒(たにざき みお)が俺の目の前にチョコレートを差し出し頭を下げていたからだ。
(え……、俺に……?)
と頭の中で戸惑う。
周りにいた生徒の視線が俺たちにくぎづけになる。
「いや……、俺なんかじゃ、谷崎さんとは釣り合わないと思うよ……。」
本当に無意識だった、いや少しくらいは意識してたのかもしれない。
しかしながら俺という人間の本能が、周りの目を気にして断っていたのだ。
言った後、すぐに後悔することになった。
……谷崎美緒の泣いている姿を目にすることになったから。
「そう”だよね”……。」
彼女は泣きながらも、一生懸命声を絞り出して返事をした。
谷崎は、そのまま走って帰ってしまった。
どうしてこうなったのか、俺は一人で考えた。
俺はクラスの中で、いじられキャラだで。
他の人に馬鹿にされたり、からかわれたりすることには慣れていて、自分でもいじられキャラが似合っていると思っていた。
初めからいじられることが好きだったわけではない。
馬鹿にされたり、からかわれてるうちに、みんなが笑ってくれることに喜びを覚えてからだった。
何のとりえもない俺に、とりえができた気分だった
そんな奴に告白する人がいるなんて、ましてや一番可愛いと思っていた子から。
しかし、俺は裏切ってしまったんだ。
他の誰でもない自分の、本当の気持ちを……。
俺の大嫌いな、2月14日の思い出。
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