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笹原さんはやっとパソコンの画面からこちらをチラリと見た。でも直ぐに画面に戻ってしまう。涼しい顔で俺の質問をスルーした。答える義理はないってことなんだろう。
「分かりました。じゃあ、来週の金曜日は俺と飯一緒に行ってください」
笹原さんの目がジロリとこちらへ向けられる。なんでわからないんだ? って笹原さんの顔が言っている。
「……約束はできない」
「なにも用事なかったらでいいっす。俺、待ちます。あ、ちなみに、笹原さんの誕生日っていつなんですか?」
「個人情報」
笹原さんはプイとそっぽを向いて言った。
「そんなこと言わないで教えてくださいよ! 減るもんじゃないしっ!」
「うるさいな! 十月だよっ」
「何日ですか!?」
「十一!」
「十月十一日ですねっ! 分かりました! 覚えておきますっ!」
俺が胸をドンと叩くと、笹原さんが嫌そうな顔をした。
「じゃあ、来週用事なかったら一緒にご飯しましょうね!」
「用事が入ったらキャンセルでいいって事?」
笹原さんは困惑顔でチラリと見てくる。
「はい! それでいいっす!」
「じゃあ、用事入った」
キッパリと言った俺に、笹原さんもキッパリ返してきた。
「そんなツンなところもたまらないです」
デレデレして言い返すと、笹原さんは「もーっ!」と顔のパーツをギュと寄せ、小さな子がプンプンするみたいな可愛い怒り顔になった。
「諦めろよっ!」
高い声もめちゃくちゃ可愛い!
「好きな人を簡単に諦めたりしないっす。ちゃんと段階も踏みます。笹原さんとまず友達になれたらいいなって思ってます」
笹原さんは視線を彷徨わせながら徐々に落としていった。風船がしぼんでいくようだ。
「友達なら、ご飯食べに行かなくてもなれるだろ……仲良く、友達になったらわざわざ約束なんかしなくても自然とご飯でもなんでも行けるようになるさ」
俺は俯いてゴチャゴチャ言ってる笹原さんへ、カウンター越しに上半身を伸ばしキスした。
「!」
笹原さんは勢いよく跳ね起き、椅子に座ったまま後ずさりした。目は真ん丸で口もパカッと開いている。驚いた顔も強烈に可愛い。
しばらくして、意識が覚醒したのか頬をピクピク痙攣させながら笹原さんが言った。
「……何が段階だよ」
「段階踏ませる気ないなら俺のペースで行きますよ」
サッと顔色が青ざめる笹原さん。怯えた表情も可愛い。
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