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「好きな人なら他所で作ってよ。男の俺なんかより、かわいい女の子なんて五万といるだろっ」
「笹原さんより可愛い女子は大学にいませんでした。それに、俺は笹原さんに一目惚れしたんです。いまさら他に目移りなんてしません。好きになったらとことん行くのが俺っす」
笹原さんが耐え切れないというように吐き出した。
「迷惑なんだよ!」
「迷惑掛けないようにがんばります」
睨むような目の笹原さんと視線がぶつかる。先に視線を逸らしたのは笹原さんだった。グッと目を瞑り俯き、片手で髪の毛を掻き上げ柔らかそうな髪の毛をギュウッと乱暴に握った。その表情は悔しそうで「なんで分かってくれないんだ」と怒りを堪えているようだった。
俺は時計を見て「外の、しまってきます」と事務所から出た。陳列してある新品のタイヤを倉庫にしまって鍵を掛けないといけない。
笹原さんもイライラした様子で片付けを始める。怒った笹原さんはとても可愛いけど、これ以上怒らせたらダメだろうなと考え、片付けが終わるとおとなしく帰る準備をして外へ出た。
事務所を閉めるのは笹原さんの仕事だ。笹原さんを待っていると、ワインレッドの車が入ってきた。さっきの奴だ。大学の先輩だと言っていた。
そうか。笹原さんはあいつとデートの予定があったんだ。
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