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次に浮かんだのは先輩の部屋に連れ込まれ、ガンガン責められてる笹原さんの姿だった。
「…………」
ボーッと妄想に浸っていると、突然声を掛けられた。
「お客様、一時半でラストオーダーですが、ご注文はよろしいでしょうか?」
「へ?」
見上げるといつの間にか店員が立っている。
「あー……大丈夫っす。ありがとう」
そっか、この店二時までなんだ。もう少し浸っていたかったのに。
俺はドリンクバーで三十分粘り、二時ちょっと前に店を出た。腹が満たされたおかげで、惨めな気持ちは少し回復したような気がする。
「は~……」
五分ほど歩いて、笹原さんの住むアパートへ到着。足を止め、二〇一号室を見上げた。
清水とかっていう先輩とマジで付き合ってたら、今日はアパートへ帰ってこないかもしれないよね。まさかドア叩いて帰ってるか確認するわけにもいかないし。
諦めて自分のアパートへ戻るしかないことは分かっていたけど、離れがたくてしばらく部屋を見上げていた。
背後から車の気配。道の真ん中でボーッとつっ立っていた俺は、不審者と怪しまれてはマズイとアパートの影に隠れて車をやり過ごそうとした。ヘッドライトが近づいてくる。通り過ぎるかと思った車はアパートの前で停まった。
あれ?
建物から顔を出して見ると、車はあのワインレッドだった。
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