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笹原さんが怯えないようになるべく優しく微笑んで頭を下げる。そんな俺に笹原さんは完全に無表情で名を名乗った。
「笹原圭一です」
「けい、いち?」
俺は顔を上げ、笹原さんをマジマジと見た。
聞き間違いかな?
「……なに?」
笹原さんは眉を寄せ、不信そうにボソッと言った。
「あ、いや、その……けいいちって聞こえたんで……」
「ケイイチって言ったからね」
「いや、だって。ケイイチって……」
冗談でも言ってるのかな? と笑おうとして、ハタとその可能性に気づいた。
「え……笹原さんて、もしかして男ですか?」
「初日から喧嘩したいの?」
「あ! や! そういうわけじゃなくて!」
アワアワと両手を振りながら、笹原さんをマジマジと見る。
マジかよ。こんな小顔の男っている? あんな細い首で、あんな華奢で、目なんてクリクリしてるのに! 顎に髭なんか一本も生えてないし! 着ているツナギなんて、笹原さんがもう一人入りそうじゃん!
「笑えないよ。その冗談」
冷めた口調の笹原さん。和気あいあいとは程遠い空気が俺と笹原さんの間に流れている。そして俺はツンな笹原さんの態度に胸がキュンとしてしまった。
これが俗に言う「ツンデレ」のツンの状態なのか。ツンの女子なんてムカつくだけだと思っていたが、可愛い子がツンをすると、こんなにクるものなのか。キャンパスラブってすげぇ。あ、いや、違う。
ここはガソリンスタンドだから、ガソスタらぶだ!
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