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「あ、いや、冗談じゃなくて、真剣に可愛い女子だと思いました」
真顔で言うと笹原さんは店長の方を向いてしまった。
「彼、僕と組む気がないみたいですけど」
「組みたいです! 是非! 笹原さんに指導してもらいたいです! よろしくお願いします!」
俺は九十度に腰を折り、笹原さんへ頭を下げた。笹原さんとバイトの間一緒にいられるなんて、幸運としか言いようがない。今まで九年間、むさ苦しい奴らとつるんでいたことへの神様からのご褒美なのかもしれない。
店長はクスクス肩を揺らして笑ってる。
「いいコンビじゃないか。剛田くんはラグビーをやっていたそうだから。体力的にキツイのも大丈夫そうだし。エンジンの点検なんかはしっかり笹原くんに仕込んでもらえるから」
店長は笹原さんへ説明しつつ立ち上がると俺の肩をポンポンと叩いた。
「じゃ俺は銀行行ってくるから。笹原くん、剛田くんをよろしくな」
笹原さんはうなじを触りながら仕方なくというようにちょこんとお辞儀で返事した。
「ここはセルフのお店だから、給油はお客様が自分でします。俺たちの仕事は、車の誘導に洗車。掃除とゴミ捨て、タオルの洗濯。操作の案内。カードの勧誘。慣れてきたらウインドーウォッシャー液やワイパー、タイヤの補充や交換の販売もするけど、いっぺんには無理だからおいおいでいいよ。まずは掃除や洗濯中心で」
「はい」
テキパキとよく動く可愛い口元をジーッと見つめる。柔らかそうな唇だ。リップを塗っているわけじゃないのに、ほんのり赤色って……。
「一応パネル操作の仕方を説明するよ。って聞いてる?」
声もちょっと高めで可愛いよな。喉仏……ないっぽいし、やっぱ女子なんじゃね?
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