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清水先輩とおしゃべりしながらドライブを楽しみ、車は新宿方面へ。着いたバーは入ったことのない雰囲気。内装もシックで確かに大人っぽい。ギラギラした感じじゃなく、落ち着いてて、かなりいい雰囲気だ。カウンターに座ってる客も、バーテンダーも洗練されている。みんなクールでオシャレ。男の人が多い。男の隠れ家的な店? まるで社交界デビューでもしたような気分だ。出かける予定だったんだから、俺ももっとちゃんとキメた服装にすればよかった。
清水先輩の後に続き、カウンターへ並んで座る。どうしていいのか分からない。キョロキョロ店内を観察していると、清水先輩がスムーズかつナチュラルにカクテルをオーダーしてくれた。
「シンガポールスリングだよ。ゆっくり飲んでね」
「いただきます」
グラスを手にちょっとお辞儀して、先輩の言いつけ通り少しだけ口に含んだ。ふわっと甘い風味が口内に広がる。柔らかい味で、飲みやすくてフルーティ。
「おいしい。初めて飲む味。何が入ってるんですか?」
清水先輩へ尋ねると、にっこり微笑み丁寧に教えてくれた。
「ジン、レモンジュース、チェリーブランデー、砂糖、ソーダ。甘い物が好きな子にピッタリだよね」
「ええ、気にいっちゃいました」
「他にも甘いカクテルはあるからね。いろいろ楽しめるよ。でもゆっくりね」
「はい、ゆっくりいただきます」
そういって先輩のグラスに軽く寄せて、もう一口。店の雰囲気に飲み込まれるというか、まるで別人にでもなったような気分になる。
「ここへはよく来るんですか?」
「たまにね」
「清水先輩っていろんなお店知ってますよね。俺なんて開拓精神が無いっていうか、バイトもこんな時間になるし、あんまり出歩かないからお店とか全然知らないんですよね」
「この店、週末は朝の四時まで営業してるから。また一緒に来よう」
「社会勉強に是非、お願いします」
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