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「もちろん。あ、そろそろ二杯目いいかな。テキーラサンライズをお願いします」
迷うこともなくバーテンダーへスマートにオーダーしてくれる清水先輩。
もう一度乾杯。二杯目はオレンジジュースみたいで爽やかで美味しい。楽しく話していると、先輩がお手洗いへ立った。
「待っててね」
「はい」
手をひらひらと振り先輩を見送る。一人になって、店内を視界だけで見回した。
他の客はしっとりした雰囲気で話し込む二人組が多い。居酒屋とかみたいにバカ騒ぎみたいな客は一人もいない。薄暗い店内に、ゆったりしたBGM。
清水先輩といると全然強気でいられたけど、一人だとちょっと恐縮してしまう。やっぱり俺には早すぎたんだろうか。お酒を数回口へと運び、気を紛らわしてみたけど……。
清水先輩、遅いな。
どうにもソワソワと落ち着かない。さっきまで清水先輩とお酒を交わしていた自分が嘘のようだ。
チラリチラリとマスターや、他の客を見てはオレンジ色にキラキラと輝くお酒を見つめた。
どのくらい経ったのか、清水先輩はまだ帰って来ない。一人ぼっちに耐えきれなくなった俺は清水先輩が消えた後をたどった。
トイレのフリして迎えに行ってみよう作戦だ。
歩いていくと直ぐにお手洗いの表記が見えた。扉をあけたら通路。その先に先輩の姿が見えた。呼びかけようとして、傍にもう一人いることに気が付いた。
知り合いだろうか?
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