第一話 天狗の里

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季節は5月、桜もすっかり散り、夏のにおいがふんわりと立ち込める季節。 高校二年生の私、蓮見紗羅(はすみ さら)。 下級生も増えて部活に精を出そう! ……そう考えていた。 お菓子を作るのも食べるのも好きで、私はクッキング部に所属している。 そのため、新入部員に教えるための新メニューを考えていた。 そんなことをしてたら、あっという間に午後7時……。 教員に帰りなさいと叱られしょんぼりとしつつ、新入生への指導も楽しみにしていた。 友達と別れ、さあ家に帰って寝るぞ! そんな気持ちで歩いてた……。 5分前までは。 「はあ、はあ……。誰か……助けて……っ!!」 こんなはずじゃなかった。 どうして、どうして私はこんな目に合っているのだろう。 悲しくて涙が頬を伝う。 「誰か助けてーーー!」 5月下旬、私は人生初の妖怪に襲われた。 昔から霊感はあった。でも、何も悪さをしてこないから、気のせいとして見なかったことにしていた。 今日だってそのはずだった、はずだったけど……。 帰り道の途中に朧車に遭遇してしまい、動揺と恐怖のあまり見てみぬふりができなかった。 3mはあろうかという朧車。 私の目を見てニタァ……と笑って、私にこう問いかけた。 【オマエガ クッタラ チカラ テニハイル ニンゲンカ】 .
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