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なんだかごそごそとくすぐったい…
動物のようなふわふわとした触り心地の何かが自分の体を這っているような気がする。
俺、ペットなんて飼ってたっけ…
ぼんやりとした意識の中でゆっくりと目を開く。
外はもう日が暮れていて、部屋の中は薄暗い灯りだけ。
「ん…俺…寝てた…?」
体を起こそうとすると目の前には見慣れない毛玉…
ではない。獣人…?
ぴょこんと立った猫のような耳。
「お疲れのところ申し訳ございません…旦那様よりお支度のお手伝いをするようにと
申し付かっておりまして…」
「支度…?」
見るとこの獣人は使用人の制服を着ている。
手にはおそらく俺に着せようとしている洋服。
部屋が暗いからしっかりとは分からないけど、どうやら高価そうな洋服に違いない。
「俺自分で着替えられるよ」
「いえ、これも私の仕事ですので!」
使用人の獣人はどうしても手伝うと言ってきかないようだ。
パンツ一丁なところを獣人とはいえ女の子に見られるのは少々恥ずかしい…
でも彼女は仕事と割り切っているからなのか全く恥ずかしがることもなく
俺に洋服を着せていく。
仕方なく俺は大人しくされるがままに服を着た。
「とてもお似合いです」
「暗くて全然見えない…」
「私には魔法が使えませんので…このろうそくの灯りが精いっぱいなのです、
申し訳ございません…」
この世界では灯りは火以外は魔法でランプを灯している。
魔法のランプは火よりも明るい為、必需品の一つである。
が、魔法が使えるものにしか付けることは出来ない為
魔法が使えない者たちはろうそくの火でしか過ごすことができない。
灯りをともすくらいは俺にも出来る。
魔法のランプに手をかざし、火をともすと部屋全体が明るくなり
自分の姿を確認することができた。
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