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「って…これ、女物のドレスじゃ…!?」
「はい、ですが男性も着れるようにリサイズしておりますので体にしっかりとフィットしております」
つるんとした薄手の生地は背中と胸元ががっつりと開いており、豊満なバストの女性なら
谷間を見せることもできるのだろう。
俺が見せられるのは鎖骨くらいだけど…
体にぴったりとした生地で作られたドレスは所謂チャイナドレスのような形をしていて
ロング丈のスカートでも歩きやすいようにスリットも入っている。
ただデザインは女性物とは違い色合いも落ち着いていて草花の刺繍が施されている。
「旦那様よりお食事の前に自室へ呼ぶようにと申し付かっております。どうぞこちらへ」
使用人に案内されるまま王様の部屋へと向かう。
こんな恥ずかしいコスプレみたいな恰好で行くのは気が引けるけど
お偉いさんの言うことは絶対なのである。
ノックをして中に入ると、玉座にいた時とは違い
金の刺繍を施したジャケットを羽織っている。
「トール、よく来た。そのドレス似合っているぞ」
「あ…ありがとうございます…」
使用人は俺を部屋に入れると王様に一礼して戸を閉めた。
まさか王様と二人きりになるとは思っていなかったので
急に緊張が走る。
思い切り表情に出ていたのだろう、王様は俺の様子を見て笑う。
「そんなに気張らなくていい、建前でこういう喋り方をしているだけだし
私はあまり礼儀というものも重視していないから、楽にしてくれ」
王様の気遣いは嬉しいけど、そういうわけにもいかないだろう…
どうすればいいか分からず視線を泳がせていると、王様に腕を引っ張られる。
抱き寄せられ、顔と顔が思い切り近づいた。
近くで見ると、王様だけあっていい男の顔をしている。
「やはりエルフは綺麗な顔をしているな、実に好みだ」
「へ…?」
好み?俺は王様の好みの顔なの…?
んんん???
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