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さようなら、はじめまして
君は、この二年間ずっと一緒にいた気がする。
こんなに一緒にい続けた子もいないんじゃないか。
だからだろうか。君の息から伝わってくる思いは日に日に分かりやすくなっていた様に思う。
君が君の先輩からぼくを引き継いだ時は、いつもひょろひょろで苦しそうにどんな音を出したいのか伝えようとしていた。上手く伝えることのできない君の息を頼りにぼくも一生懸命音を響かせた。
そんな君も、二年間で信じられないぐら成長した。
重そうにぼくの体を持ち上げようとしていた君の体は大きくなり、ぼくを持っていても疲れて腕を震わせることはなくなった。君がどう吹きたいのかぼくに息でうまく伝えることもできるようになってきた。
それは、君がずっとぼくと一緒に練習をし続けてきた結果だ。いつも嬉しそうにぼくに息を入れて、名前で呼んでくれた君。丁寧に体をふいてくれた、オイルをこまめにさしてくれた君。君の一生懸命は、君の人生最高の演奏によって締めくくられた。
ぽたぽたとぼくの体に涙を落としながら、小さな体の後輩にぼくを渡す君。
そんな君がさっき小さな声でぼくにありがとうと言ってくれたのは、うれしくてたまらない。
受け取った君も泣いている。小さな体でぼくを支えている。
ああ、新しい君はどんな子なのだろうか。君と一緒に頑張りたいな。
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