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11、君と生きる世界
あぁ、君は遂に殺してしまったんだね。
君が苦しんでいたことは、ずいぶん前から知っていたよ。
それでも、君が狂っていまわないよう僕は傍にいただろう?
僕が目を離した隙に、君はどんどんと暗闇の中に沈んでゆく。
今日僕は、君の誕生日を祝いに行ったんだ。君の好きな花を持って、扉を開けたんだ。
天井からぶら下がる君は、さぞかし幸せなことだろう。現実から逃れ、長年憎しみ続けた人をようやく殺すことが出来たのだから。
……でも君は忘れている。
この空虚な世界には、まだ僕が残されているということに。
君を見上げる僕の手元から、カッターの刃を出す音が聞こえた。
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