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あれからまた幾日が経った。
今日は珍しい人物から飲みに誘われた。実に二年ぶりに会う、親友の壮だ。
久々に傷ついた壮を見れるという訳だな。どんな風に由布ちゃんの事を想って、傷ついているのだろう。とてもワクワクする。
是非とも僕の琴線を沢山震わせて欲しい。
プライベートな密談にはもってこいのバー『ルタン』に僕は足を踏み入れた。
壮に紹介して貰って玲子と出逢ったバーだ。ここに来るのも随分久しぶりだ。
玲子と会うのはお互い身体が目的だから、専らホテルで会う事が多い。だからこのような人目に触れる場所には、滅多に来ないんだ。
暗く落とされた照明が、個々のテーブルを薄ぼんやりと照らしている。
壮は既にやって来ていて、一番奥の席に座って綺麗な緑色に輝く酒――ジンライムを飲んでいた。ジンライムは、壮が昔から好きな酒だ。相変わらず好きな女も、飲む酒も一緒だな。壮は何も変わらない。
「久しぶりだな、壮。元気だったか?」
僕は挨拶を交わしながら、壮の向かい側に腰を下ろした。
「お陰様で。亜貴も何か飲めよ。ビールか?」
「いいや。君と同じものを貰おうかな」
「オーケー」
相変わらず流暢な英語の発音だ。流石だと思う。壮は慣れた様子でマスターに向かって手を上げ、同じものを彼に、とオーダーを伝えた。
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