第二話・壊れた男

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 子供の事だけれど僕は、僕みたいな狂った人間の遺伝子は絶対に残したくないから、子供は作らないつもりだ。  だから僕は早くに自分の遺伝子が残せないように、自らの手で遺伝子を処分した。だから種無しというのはでまかせなんかじゃなく、本当の事だ。  自分の子供だからって僕はきっと可愛がることもできないだろうし、遺伝子に未練は無い。  由布ちゃんはきっと、僕との子供が欲しいって思っているだろうけど。  僕の代わりに何か依存して愛する者ができれば、もう少しこの生活もマシになるだろう――そんな風に思っているんじゃないかな。でもそんなものは与えてあげられないし、あげるつもりも、無い。  そんな事になったら緊張感とか無くなってしまって、毎日つまらなくなりそうだ。  僕は退屈したら由布ちゃんを壊してしまうだろうし、色々良くないと思う。  だからそんな事にならないように、手は打っておいたから。君をもしこれからも抱くことがあったとしても、絶対に大丈夫だから安心してね。  それより何故か最近、由布ちゃんがどんどん綺麗になっていくんだ。  歪んだ――僕の闇の一部のようなものを纏って、キラキラ輝いている。  そんな由布ちゃんを、叩き壊したくなる衝動を抑えるのに必死なんだ。  きっと、壊れる日はもう近い。  僕の勘は、結構当たるからな。何かが、起こる予感がする――  
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