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愛しい女性の最後がどんな姿なのか、あれだけ見たいと思っていた筈なのに、溢れる涙で霞んでしまって、もう何も見えなくなりそうだ。
その時、何故か壮の事が頭に浮かんだ。
由布ちゃんがこの世から居なくなってしまったら、壮はさぞかし苦痛で堪らなくなるだろう。
もしかしたら、発狂して勝手に野垂れ死にするかもしれないな。
僕はすぐに、由布ちゃんの後を追うからな。
由布ちゃんの居ないこの世に、何の未練も無い。死ぬことも怖くない。
だから、お前の最後をこの目で見届けることができなくて、心から残念に思う。
けれど、お前が由布ちゃんを失って、発狂する姿を想像するだけで、僕は満足だ。
十何年もずっと、ただひたすらに、一途に思って愛し続けた女が、自ら仕掛けた罠に嵌って、永遠に失われるんだ。
壮。もうお前を手にかけなくても、十分すぎる程これからの人生、お前を苦しめてやることができるんだと思うと、嬉しくて仕方ない。
最高の置き土産を、お前に残すことが出来たんだ。残りの長い人生、由布ちゃんを自分のせいで失くした罪を、一生背負っていけ。
さよなら、由布ちゃん、壮。
――僕の、勝ちだ!
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