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その手に握られているのは“ブルータスの短剣”。オトリ作戦成功だ。
「ブルータス……またお前か……」
カエサルが断末魔の声をもらした。
怨霊よ永久に滅せよ。
そう思ったのも束の間、
「フハハハハ、同じ手が通用すると思ってか!」
カエサルが拳を振り払った。吹き飛ばされるカイザー。オレもニャンパラリンと引き下がる。
「なぜ、なぜ短剣が効かないのニャ?」
「こんなこともあろうかと、知る人ぞ知る吉田藩御用達菓子“絹与の羊羹”をサラシに巻いておいたのよ!」
カエサルが高笑いして答えた。
「なんて用意周到ニャんだ……大丈夫かカイザー?」
「ああ、すまない相棒。大したことないワン」
言葉とは裏腹に、カイザーの前足には血が滲んでいた。
「その怪我で戦うのは無理ニャ」
「大丈夫マイフレンド、私が行かなければ……」
「カイザー、なぜそこまで命を懸ける?」
「ノブレスオブリージュ──高貴なる者の義務。だがそれよりも私は、掛け替えのない人の笑顔を守りたいのだワン」
「カイザー、お前ってやつは……」
どうやらオレは誤解していたらしい。コイツも命を懸けるに値する大事なものを守る戦士なのだ。
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