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「何かの足しになればと思ってね」
王の側近に戻るなら、いくらでも勉強しておく事柄があり、それでなくても式典衣装に関する学び直しをしている最中なので、あれもこれもと忙しい身の上だ。
但し、今は王の側近としてではなく、ヨシュアの暮らしが滞りなく健やかなものであるよう整えるのがシモンの役目だった。
だから、卒業試験に向けて頑張っているヨシュアの手助けになるべく、お兄さんの結婚祝いの贈り物を考える参考になればと思って調べようとしていたのだ。
「まあ、ヨシュアは自分で決められるだろうけどね」
もともと、無駄になる想定もした上で動こうとしていた事であり、王も個人的に何かしらは贈るのだろうから、丸っきり無意味にはならないはずだと考えていた。
それでも、肝心のヨシュアの手助けに繋がっているとは、あまり言い難かった。
一人で歩き出したヨシュアであっても、お役御免になるまで最善を尽くす。
そう、決意を新たにしたのは王の言葉ではっとさせられたからで、今日だって、へルマンに自分を見失うなと嗜められたばかりのシモンだ。
ヨシュアには頼りにしてと宣言しておいて、情けないにもほどがある。
側近の役割りは必ずしも目に見える形で成果が現れるものではなく、むしろ、誰の目にも止まらない方が望ましい場合が多い。
覚悟と決意が足りないなんて、今更な話だった。
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