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お別れは、突然やってきた。
その日、僕は飼い主に急に抱っこされ、外に連れ出された。
お母さんも飼い主の後についていき、飼い主に対して何の疑問も持たず、いつものように尻尾を振っていた。
初めて外に出る僕は、純粋に飼い主が外のお散歩に連れて行ってくれるのだと思った。お母さんも僕と同じで、そのくらいに思っている様子だった。
いつも窓から見ていた家の庭や敷地。そこから、僕は今出ようとしていた。
お母さんも一緒にお散歩かな。
僕はワクワクして、お母さんを見る。
お母さんも僕を見ていて、微笑みかけていた。
楽しみだなぁ。
僕は初めて見る外の世界に、尻尾を振った。
そして……。
玄関がぎぃと嫌な音を立てて閉められた。
お母さんが、外に出ていなかった。
僕一人だけ?
僕は飼い主の方を見たけど、何も答えてくれない。
お母さんは、玄関の鉄の扉の合間から、どこか不安げに僕を見つめていた。
飼い主は僕を車に乗せて、段ボールの中に入れた。
それが、お母さんとのお別れだった。
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