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しばらく大人しくしていると車が止まり、僕はこの小さな段ボールごと、外に出された。
飼い主は運んでいる間、ずっと無表情で、僕はそこから何も知ることはできなかった。
そして、僕はどこかに置かれた。
飼い主は何か言ったけど、僕は人間の言葉がわからなかった。すごく残念そうな顔をしていたから、僕は急に不安になった。
嫌だ。
嫌だと鳴いた。
そのとき何が嫌なのか、わからなかったけど、とにかく嫌だと思って鳴いた。
飼い主は困った顔をして目を瞑った。そして、僕の視界から、いなくなった。
どうして?
嫌だよ、こんなの。
僕は何度も鳴いた。
聞き慣れた車の音がする。
僕は必至でその音にかき消されないよう鳴き続けた。
車が遠ざかっていく意味もわからないままに。
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