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携帯式遠距離型特殊銃を構えた。
弾丸タイプは通常弾。
膝をついた敵大型二足歩行兵器の上に立ち、戦況を眺める。
「敵少なくね?」
SF-S001は顔を顰めた。
交戦しているのは自軍の兵士達と敵の大型兵器とそれに付随するようにちらちらと確認できる中型兵器。
『文句言わずに手を貸してください』
直接耳に話しかけるように女性の声がする。
「手を貸すって、何すりゃいいわけ?これ俺いらなくね?」
衛生兵が傷ついた兵士を後方へと運ぶ。
人体が、生身の体が、鈍器同然の兵器に敵うはずがない。
だが、多勢に無勢。兵器の数よりも人の数が多いのだから、なんとかなるだろう。
『怪我人庇いながら待避してるんです。その間敵の気を引いてくれって話ですよ』
理解できます?と先ほどと同じ女性の声。少し尖り気味だ。
「敵の気ィ引くだけってのが気に食わねぇわ。全部ブチ殺す」
『アンタがいきなり暴れ出したらむしろ仲間の方が混乱するっつーの!って、聞いてんの!?』
情報部ことオペレーターは戦地に出ている兵士の動きをモニターで確認している。なのでS001が動いたことは彼女には伝わってしまっている。
だが、制止はできない。彼女が出来るのは言葉を伝えることのみだ。
S001はその場から飛び降り、勢いよく地を蹴った。
S001の接近に気付いた中型兵器の銃口がこちらを向く。
人と違い引き金を引くわけではないので、発射までの予備動作はほとんどない。
S001は敵の銃口を見ながら銃を構える。足は止めない。
敵を攪乱するように動く。この兵器に機敏性はない。そこを突いて落とす。
敵の後ろに回る。
全方向確認できているのか、敵は銃口部分のみを後ろに回してきた。
その重心を踏み台にし、S001は敵の頭部を乗り越え、再び正面に着地。銃口が自分を捉える前に、頭部に自分の銃を接触させ、そのまま引き金を引いた。
動きが遅い。
遅すぎる。こんなのに奴らは敵いもせず、それどころか怪我をさせられている。
情けない。
後退している部隊に目を移す。
守るべき仲間。そういう指示を受けて今自分はここにいる。それ自体には異論はない。
S001は敵に視線を戻しながら、無意識に舌打ちをした。
こんな雑魚相手ではこの鬱憤すら払えまい。
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