act.001

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「――って言ったら、この話は無しになる?」 ゼロは自分の更に向こう側、若大将を見据えていた。 その声に敵意はない。当たり前のことなのに、確認せずにはいられなかった。 「なりまっせーん!」 背後から怖いほど無邪気な声がした。 その声に、目の前の男の固く結ばれていた口角が僅かに上を向いた。 「yes,sir」 その口が滑らかにそう動いた。 S001は大げさなほどに首を動かして若大将の方に向き直る。 「ふざけんな!勝手に決めてんじゃねェよ!」 態と声を張った。 この場の空気を少しでもこちらのものにしたかった。 そうしなければ、そう思っている時点でこっちの方が格下だ。 「えぇ?」 若大将は幼気な仕草で首を傾げた。 「確かにピンは強いよ?けど、その慢心で危機に陥ったらどうするの?誰がピンを助けるの?」 そんな状況が来るものか。 だが、もし来たのなら潔く死ねば良い。自分の代わりはまだまだ沢山いる。 使われてやってる身で、更に制約をかけてくるなんて鵜呑みに出来る案件ではない。 だが、その前に問うことがある。 「ピン?」 「そっ。お前の渾名」 覚えてね、ゼロ。 若大将がS001の更に後ろの言葉を飛ばした。 返ってきたのは「善処はする」というゆるりとした声だった。
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