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「今日のラブチャンスどうだった?」とホネがきいてきたので、壮志郎はついさっき見た「ラブチャンス」の様子を子細に話しきかせた。  相変わらずシュッとしてたよ? いつものようにブランドジャージはスポーツの気配などみじんもない完全なタウンユース、スニーカーも同じ。どれもこれからクラブにくりだします、もしくは朝帰りみたいなキラキラ仕様。荷物は小さなボディバッグを斜め掛けにしているだけ。足元には尊大な面構えの小型犬。  この寒いのにジャケットは薄手、手にはいつものコーヒーとスマホ。麗しきキラキラ男子。ホネによる推定年齢は27歳、職業愛人(ホネと壮志郎で勝手にそういうことにしている)。    壮志郎の報告に、ホネはあからさまにテンションを下げた。自分だけ「ラブチャンス」を見られないのが最大の不利益であるかのように、がっかりする。  かわいそうだが仕方ない。「ラブチャンス」目当ての朝のランニングは、当分ホネには無理である。  なぜなら移動はぴょんぴょんと右足をかばいながらキッチンのシンクまでたどりつくのがぜいぜいで、グラスに浄水器の水をそそいで病院で処方された痛み止めを口にほうりこんだ後は、ケガが回復するまで家でごろごろしているしかない。  
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