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 ホネは、出会いから換算すると15年、付き合いはじめて12年、一緒に暮らしてから9年になる壮志郎の同性パートナーである。法的な約束ごとは何もないが、事実上の配偶者、内縁の夫だった。  長い付き合いではあったが、顔とスタイルに一目ぼれしただけあって、壮志郎はいまだホネにべた惚れである。ホネのことが好きすぎて混乱気味に浮気したことがあるくらいだ。(別にしたくてしたわけじゃない。それからその時の修羅場は思い出したくもない)。  それが、あることをきっかけにホネをホネのように思えなくなった。話せばホネだなって、思う。頭ではわかっている。けれど長年連れ添い毎日見慣れているはずのホネを別人のように感じるのだ。    ここ何年も変化という変化が特にない日々をおくっていた。  変わったことといえば出勤前の早朝にランニングを始めたことくらいだ。40になると体力ががたっと衰えるという話をきいて、習慣にしてみようと思った。壮志郎はもともと身体を動かすことが嫌いではないので、ハードルは高くない。すでにジムにも通っている。  早起きし家から5分ほどの距離にある大きな公園の、ランナー専用レーンで毎朝二周、7キロ弱を走るのを自分に課した。  その公園に行く道の曲がり角にあるコンビニのベンチで決まって見かけるのが「ラブチャンス」だった。    「ラブチャンス」――ホネと壮志郎はそう呼んでいる――は、壮志郎がランニングする早朝の時間帯、必ず通るコンビニの前のベンチにいる。  初めてみかけた日、ちょっと驚くほどの美形だったので帰ってすぐホネに報告した。(壮志郎はホネになんでも話す)それから毎朝今日はどうだったこうだったと話しているうちに、ホネもその男に興味を持つようになった。 「俺も走ろうかな」とぽそりと言った。しかし壮志郎は聞き流していた。  なぜならホネは運動と朝が死ぬほど苦手だ。園の勤務シフトが早番の日など地獄みたいな顔で出勤しているのだ。そんなホネがランニングをするなんて、世界の終わりが来てもありえないと壮志郎は思っていた。  
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