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しかし、俺は先ほどの斗真の腕の温かさを思い出し、ボッと音が出そうなほど顔を赤らめた。
どこかに隠れたくなるほど恥ずかしくなった俺は勢いよく机に伏せて寝ている振りをした。
こういうときはこうして誤魔化すのが一番だ。
それに、どんな顔をして斗真と会えばいいのか。
狸寝入りをしながら、俺の頭の中は斗真の顔とその腕の温かさでいっぱいになった。
顔の熱さは中々引いてくれなかった。
そんな俺の様子を先に教室に入っていた翔琉がずっと見ていたことや、斗真が俺の去った方向に切ない眼差しを送っていたことなど、俺は何も知らなかった。
時間はあっという間に過ぎていく。
斗真とも翔琉とも気まずくて話しかけることは出来なかった。
クラスメイトの男子に心配されたりもしたが、笑って誤魔化したりしている内に気が付けば放課後が訪れていた。
クラスメイトの大半が教室から出ていったのを見計らって、俺も教室を出ようと鞄を持った。
斗真も翔琉ももう教室にはいなかった。
旧音楽室に向かう間に、昼間の間に考えておいた手紙の返事を頭の中で整理する。
返事は断るつもりだった。
もちろん、手紙の中で言っていた「話したいこと」というのが告白だった場合だが。
よく知らない女の子と付き合うほど俺は器用でも免疫がある訳でもないのだから。
そう思いながら納得するも、どうしてか幼馴染二人の顔が頭に浮かんで消えてくれない。
断る理由に二人との仲がぎくしゃくしてしまったことへの当てつけがあるのかもしれない。
そう思ってはいても、気持ちを変えることは出来なかった。
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