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旧音楽室に入るも、誰もいない。
少しだけ、待ってみることにした。
夕日が音楽室に入り込む。
まるで違う世界に来てしまったみたいだ。
……そういえば、何も言わずにばらばらに帰ってしまうのは初めてだな。
そんなことを思って少しだけ寂しくなった。
斗真も翔琉も寂しく思ってくれているだろうか。
いや、そんなことは考えないようにしよう。
非常に穏やかな放課後の旧音楽室でセンチメンタルな気分に浸っていたからだろうか。
廊下から聞こえてくる数人の女子の笑い声がどこか濁っているように聞こえたのは。
厭らしく聞こえてくるその笑い声は、だんだんと近づいてきて、やがて旧音楽室の前で止まった。
嫌な予感しかしない。
扉の隙間から漏れてくる女の子たちの内緒話に耳を澄ませる。
「本当に来てるかな」
「いや、来ないと思うね」
「くすくす、でもさぁ」
俺の背中を汗が伝う。
あぁ、こんなところに来てはいけなかったのだ。
彼女たちの会話の内容の全てを聞き取れる訳ではなくても、その隅々に溢れる悪意的なニュアンスは嫌でも伝わって来る。
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