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また新たな悪魔が加わるのかと思って怖かったのだ。
でも、当の彼女たちも驚いて扉の方を向いていることから、扉を開けたのが彼女たちの仲間ではないことを理解した。
扉を開けたその人は、彼女たちを一度睨むと、何も言いうことなく俺の前にやってきた。
そして、強く俺の手首を掴むと、
「行くぞ」
とだけ言って、俺を引っ張りながら旧音楽室を出た。
女の子たちの側を通るとき、彼女たちは酷く怯えていた。
あの黒い瞳に睨まれれば、誰でもそういう風になってしまうのかもしれないな。
のんきにそんなことを思った俺は、決して俺を裏切ったりしないという絶対的信頼を置いている二人の内の一人が助けてくれたことにより、随分と心に余裕が出来ていたのだろう。
自分の手を引っ張って無言で誰もいない廊下を歩く背中に声を掛ける。
「……翔琉」
思っていた以上に情けない声だった。
その小さなか細い声に反応して、翔琉は立ち止まって俺の方を振り向く。
その表情がものを言っている。何だよ、と。
その翔琉の視線に耐えられなくて、俺は繋がれた右手に視線を落とした。
とても痛い右手首を見ているとなぜか涙が溢れて止まらなくなった。
左手で目元を必死にこする。
泣きたくなんかない。
弱い自分は嫌いだ。
そんな俺を見た翔琉は近くの空き教室の扉を開けると俺をそこに引っ張り込んだ。
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