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突然のことに驚く俺に構うことなく、翔琉は扉を閉めるとそのまま俺を壁に押し付けた。
俺の顔の横に手を繋いでいない方の翔琉の手が置かれる。
世間で言われるところの壁ドンというものだろうか。
何故か俺は冷静にそんなことを考えた。
この状況にびっくりした俺は、いつの間にか涙が収まっていた。
俺を見下ろす翔琉の表情はどこか痛々しいものだった。
何か、あったのだろうか。
どこか痛いのだろうか。
そんな風に思った俺は自分でも気が付かぬうちに空いている方の手を伸ばして、翔琉の頬にその手を添えた。
翔琉は俺のその行動が予想外だったのか、一度目を大きく開くと、口を開いた。
「俺が、どんな思いで……っ……」
顔を逸らしながら呟かれた小さな翔琉の声は、何を言っているのか聞き取れなかった。
「え?」
そう問うた俺に翔琉は顔を向ける。
苛立ちを含めたような、どこか寂しそうな表情をしていた。
翔琉は壁に添えていた手で一度壁を強く殴る。
心なしか俺の手首を掴んでいる手の力が強くなった気がした。
俺はそんな翔琉の様子に怖くて声を出すことが出来なかった。
翔琉はそんな俺を傷付いた表情で見つめる。
こっちまで胸が痛くなるような、そんな瞳で見つめられる。
なぜか責められているような気がして、俺の目線は自然と足元に落ちていく。
完全に視線が床に落ちる前に、俺の顔は上にあげられた。
翔琉が俺の顎を持って上げさせたのだ。
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