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「まだその手紙がラブレターかどうかも分からないけどね。開けてみて、航」
翔琉に怒ろうと思っていた気持ちも、斗真の冷静な声を聞いている内に落ち着いた。
確かに、内容が分からないのにラブレターだと決めつけるのは早い気がした。
でも、ラブレターって、こう、何て言うか一人でひっそりと開けるものじゃないのか?
首を傾げながらも、俺は言われるがままに手紙を開けた。
内容は、期待を裏切ることなくラブレターそのものだった。
『今日の放課後、話したいことがあります。旧音楽室に来てください。待っています』と書かれていた。宛名はなかった。
「……ラブレター……」
「だね」
「あぁ」
俺は、というか三人とも信じられないような顔をして、俺の手の中にある一通の手紙を見た。
二人の視線がどこかとげとげしい気もするけど、顔が見えない分、確かなことは言えない。
「はっ、お前にラブレターとか、調子に乗ってるんじゃねぇぞ」
低い声ではっきりとそう言い切った翔琉。
その後すぐに俺の右側の気配が無くなったから、翔琉は先に教室に向かったのだろう。
俺は恐る恐る左側にいる斗真に顔を向けた。
斗真は翔琉の去っていった方向に目をやっていた。
何を考えているのか分からない斗真の表情に急に不安が押し寄せてきた。
いつもなら、どうせご飯のことを考えているのだろう、と呆れることも出来るのに。
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