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……二人のことが見えなくなった。
まるで、突然、暗闇に放り出されたみたいだった。
「……俺が、ラブレターってやっぱり調子に乗ってるよね。……ははは、二人からしたら、ほんとに嫌だよね、俺なんかが……」
一言一言話すごとに声が震え、心なしか視界がぼやけていくようだった。
こんなことくらいで泣くなんて、そう思うたびに視界は歪んでいく。
そうやってそこまで言葉を紡いだ時だった。僕の身体が突然温かい何かに包まれた。
はっとして顔を上げると、苦しそうな顔をして斗真が俺を抱きしめていた。
自分が置かれている状況を理解した途端、頭が真っ白になった。
真っ白な俺の頭は真っ白なりに必死になって考えた。
……朝、生徒、視線、見られている、羞恥。
最後の言葉が頭に浮かんだところで俺は思いっきり斗真を突き飛ばしていた。
全力で階段を駆け上り、自分の教室に入る。
バンッと、大きな音を出しながら教室の扉を閉めて、自分の席についた。
深呼吸をして、落ち着こうとする。
大丈夫だ。
時間にして一秒、いや三秒か?
とりあえず、五秒以内であることは確実だ。
見た人は少ないし、その人たちが誰かに言いふらしたところで、きっと信じる人は少ない、はずだ。
そこまで考えたところで俺は、ひとまず落ち着く。
何だ、大丈夫だ。大したことはしていない。
何を動揺しているんだ。
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