71人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「俺のどこかそんなに好きなの?」
予想外の君の返しに、僕は面食らう。きっと好奇心で聞いているのだろう。男に告白されたのは今日が初めてだろうし。
僕は唾を飲んで一呼吸おいてから、こう答えた。
「動きに無駄がないとことか」
きっかけはそんなものだった。
「とか」
「たまに鋭いことを言うとことか」
「とか」
先を促すように言葉尻を捕らえられ、僕は少しムッとした。でも、この際素直に言ってしまおうと思った。
「顔も好きだ」
実はこれが一番の理由かもしれない。顔が好みだったから、なんて軽薄で言いづらいが。
「やっと言った。俺の顔が好きなんだな」
満足したように君は笑った。まるで、まんざらでもなさそうに。
「おまえ、俺と話すときだけ耳たぶが赤くなってたよ。俺の顔を見てぽやっとなってた」
バレていたのか。僕の気持ちもお見通しだったのだろう。
「気持ち悪いって思わなかったのか。僕の態度」
「思わなかった。俺もおまえのことが気になってたから」
僕は息をのんで、君の顔を凝視した。とうてい信じられる言葉ではなかった。
君は僕の顔を見て呆れたように苦笑し、肩を竦めた。
「俺は言うつもりなかったんだ。おまえは地方の大学に進学するだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!