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恋はタイミングじゃない
卒業式が終わって皆が早々に下校するなか、僕は君を中庭に呼び出して、告白した。
「ずっと好きだったんだ」
頬が熱くなることはなかった。実際顔は赤くなっていないはずだ。
僕は淡々と話した。
「同じクラスになってから二年間、ずっと好きだったんだ」
卒業式の日に自分の気持ちを打ち明けようと決めていた。そうでもしないと、この、胸に溜まった君への気持ちを、なかなか昇華させることができない。君に思い切り蔑まれ、気持ち悪がられれば、すっぱり気持ちの整理がつく。端から、君と両想いなのでは、なんて望みは一パーセントも持ち合わせてはいない。
「ふーん。まあ、そんなことだとは思ってたけど」
君は意味ありげに言って、視線を落とした。僕の顔から、ワイシャツの襟、ブレザーの裾、プレスしたばかりのズボンの膝下へと。そしてちょっと可笑しそうに笑った。なぜ笑われたのか分からなくなった僕は、急に落ち着かない気分になった。
「なにか可笑しい?」
「いや、べつに。手がさ、落ち着きないよな」
言われて初めて気が付いた。僕は手を、開いたり閉じたりしていた。それだけではなく、手のひらに浮いた汗を、ズボンに擦り付けてさえいた。
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