僕とお父さんと時々ラムゥ

１・犬のお父さん始めました。

　父さんが死んだ。
　大動脈瘤破裂(だいどうみゃくりゅうはれつ)による突然死。運転中の事故だった。
　ガードレールに突っ込んで、停止していた軽トラックを、近所に住む人が発見した。ハンドルを握ったまま、運転席につっ伏くしていた父に、声を掛けても応答がないので、救急車を呼んでくれたらしい。救急車が現場に着いた時には、既に心肺停止の状態だったと、後に駆け付けた病院で、僕らは知らされた。
　舘石伊佐男(たていしいさお)、享年５９歳。４月になれば還暦を迎えるはずだった。７０歳以上が敬老とされる昨今では、若すぎる死だ。
　父親の葬儀には、沢山の人が訪れた。思っていた以上に人望があったらしい。葬儀はあっという間に終わり、棺の中で横たわっていた蝋人形のような父親は、小さな壷に骨となって納まった。
　葬儀から一週間程経った今では、和室に作られた簡易的な仏壇に、写真と一緒に置かれていた。４９日の法用まで、花を添え、一日一回、線香を立てて、故人を偲ばなければならないらしい。それは僕の役目だった。
　本日の線香を立て、ついでに隣の仏壇に飾ってある祖母の写真も拝んでおく。線香臭い和室を出て、リビングに向かう。