一人暮らし

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一人暮らし

 少し部屋の換気をしよう。  咳き込んでばっかの、私の体内から排出された菌で充満した薄汚い部屋じゃ、空気が悪すぎる。  そう思って窓を開けると、眩しすぎるほどの西日に晒された、青とオレンジが混ざり合う綺麗な空が、目の前いっぱいに広がった。  それと同時に流れ込んだ冷えた外の空気が新鮮で、思わず胸いっぱいに深く呼吸をした。  清々しい。  鬱々としていた気分が、すぅーっと晴れていくような感覚に心地よく身を預けて、少し視線を右へ外してみれば、田舎ならではの田んぼ風景もまた、綺麗なオレンジの陽の光に照らされていた。  遠くの方で、車が走り去る音が聞こえる。  すぐ背後では、今しばしつけたばかりのテレビ番組がCMに切り替わった所だ。  様々な生活音が、雑音とも思えるほど騒々しく感じる中で、風の音だけは静かに、全ての音を優しく包み込んで私の耳に音色を届けた。  風の音に耳を傾けて、目を閉じる。  どこかの家で、誰かが洗濯物を取り込んでいるらしい。  ぱちぱち、しゅる、洗濯バサミの音と衣類が擦り合わさる音が、これまた心地よく私の耳に届く。  幼い頃、風邪を引いたときお母さんの部屋の布団で寝ていた時の風景を思い出した。     
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