1.

2/20
前へ
/94ページ
次へ
「入学、おめでとう!」  桜の舞う季節。  俺は、第一志望である桜坂上高校へ合格した。  この学校は都内でも有名な水泳強豪校で、インターハイ常連校である。 「今日から1年間、君たちの担任になる後藤田護(ごとうだまもる)と言います。水泳部顧問だからこの中には俺を知っているのもいるな」  俺は小さく頷いた。  2歳の頃からスイミングを習い、小学校時代は学校の代表選手、中学の大会では必ず表彰台に登ってきた。  この学校へはスポーツ推薦で受験した。  後藤田先生は中学にも顔を出してくれていたし、何度か話したこともあるから覚えている。  そして、もう1人。  2列ほど離れた場所に座る浅黒い肌をしたガタイのいい男のこともよく覚えている。 「三浦と同じクラスになれるとはな!」  HRが終わり、真新しい教科書がぎっしりと詰まった鞄を肩にかけたところでその男に声をかけられた。 「野島……だったっけ?」  顔はしっかり覚えていたが、名前が曖昧だったので自信なさげに聞くと、いきなり背中を叩かれた。  見た目に違わず力が強い。  ちなみに良くいえばワイルド、悪くいえばゴリ系だ。     
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加