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坂道の両側にも、ずっと桜並木が続いていた。
「絶景だな」
「ああ。受験しに来た時は呑気に景色なんて見てらんなかったからな」
坂を降り切ると、自分たちとは別の制服を着た女子生徒たちが目に入った。
彼女たちの学校は、平坦な道の先にある桜坂下女子高等学校だ。
他の女子校の事は知らないが、この学校だけは俺でなくても知っている。
何故かというと、“超”がつくほどのお嬢様学校だからだ。
幼稚舎から高校までの一貫校で、日本の資産家に生まれた女子は全てここに集まると聞いている。
「お嬢様でも電車通学なんだな。立派な車あるだろうに」
隣で野島が呟いた。
「確かに」
「見てみろ、アイツらの俺らを見る蔑んだ目。気分悪い」
言われてみれば妙に距離を取って歩いていたり、まるで汚いものでも見るかのような視線を投げつけながら何やらコソコソと小声で話しているのが見えた。
「いくら金持ちでも性格悪いんじゃお断りだな」
「お前、聞こえるぞ」
「ホントのことだし」
どうやら野島は見た目通りストレートにものを言う性格のようだ。
「時に三浦くん」
突然、野島が咳払いをして口調を変えてきた。
「何?」
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