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「……そうですね。では私たちは先に昼食を済ませるので、その間希空さんは休んでいてください。希空さんの昼食はその後で用意してもらいましょう」
「わかった。じゃあ少しだけ休むね……」そう言って彼女が目を伏せたので俺たちは部屋を出た。
「何かお話が?」
佐伯さんの個室もあるようで、俺はそこへ通された。佐伯さんらしい実にきっちりとした印象の部屋だ。置かれているものの全てが四角い。
「ちょっと言いづらいんですけど……」
四角い大理石のテーブルに置かれたサンドイッチを頬張り、飲み込んでから切り出した。
「気づいてるかもしれないですけど、俺は結城さんのことが……好きです」
自分でもわかるくらい真っ赤な顔をした俺とは反対に佐伯さんは冷静な表情で「ええ。知っています」と答えた。
「で、ですね。もし、俺が彼女に告白をしたら……やっぱり心臓に負担がかかりますよね」
「そうですね。緊張と興奮状態になりますから」
「ですよね……じゃあやっぱり今は言わないのが得策か……」
用意された冷たいレモネードは当たり前だが少し酸っぱかった。
「いえ、言うべきだと思いますよ」
佐伯さんは真夏だというのに涼しい顔をして湯気の立ち上るコーヒーを啜った。
「え……?」
カップをソーサーへ静かに置くと、佐伯さんは続けた。
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